車を運転していてハンドルが取られるという症状の多くは、ハンドル自体に問題があるというよりも、タイヤや足廻りに問題があり、それがハンドルに伝わってくるという考え方がより的確な判断といえるでしょう。

では一体、何故ハンドルが取られるのか?タイヤや足回りのトラブルで考えられる原因と対処法について具体的に説明していきますね。

タイヤの空気圧が減っている場合

まず私たち自身でも確認できることとして、タイヤの空気圧が減ってしまっていることが原因でハンドルが取られている可能性が考えられます。
タイヤの空気圧はごくわずかですが自然と抜けていきますし、夏場と冬場では温度による空気の膨張率が違うので、一度調整した空気圧であっても再度点検してみると、違った数値を示す場合があります。

また、左右で空気圧が不均一になっている場合は、空気圧が減っている側のタイヤがその分たわむことで抵抗になるので、よりハンドルが取られるという症状が感じやすくなるでしょう。

「ハンドルが取られる」と感じたらまずは、空気圧の点検を行なってみてください。身近なところですと、セルフのガソリンスタンドでも大抵は空気圧を点検するエアゲージが置いてあり、ユーザー自身でも点検ができるようになっています。ガソリンスタンドにもよるかと思いますが、無料でタイヤの空気圧点検ができるところが多いのではないでしょうか。

乗っている車の空気圧の規定値は、運転席ドアを開けて、そのドアの内側の下の方かもしくはボディ側にステッカーに記載されたものが貼られています。その数値を参考にして空気圧を点検してみましょう。空気圧が減っていただけなら空気を補充すればOKですが、もし四輪あるうちの一輪のみが異常に空気圧が減っているようでしたら、タイヤがパンクしている可能性があります。

パンクしたまま車を走行させることは非常に危険ですので、ディーラー等で点検してもらいパンク修理・またはタイヤの交換をしてもらいましょう。

ブレーキのディスクローターが原因の場合

ハンドルの振れが、ブレーキを踏んだ時にのみ現れる場合、フロントのブレーキ廻りの異常がハンドルの振れの原因だと考えられます。

ブレーキのディスクローターが使用過程において不均一な磨耗の仕方をしたり歪んだりしてくると、ブレーキ時にブレーキペダルへの振動やハンドルの振れとなって伝わってきたりします。この現象をブレーキジャダーといいます。
このブレーキジャダーを解消するためには、ディスクローターを交換することで症状が収まります。

ブレーキの片効きが原因の場合

使用過程による錆等が原因でブレーキパッドをディスクローターに押し付ける役目をする「キャリパーピストン」や、ブレーキ時にキャリパーが動く時の軸となる「スライドピン」が、固着したり渋ったりすることでブレーキの片効きが発生している場合があります。この場合もブレーキジャダーとなって、ハンドルが振れる原因となることがあります。また、ブレーキを踏んでいない時もブレーキが掛かっている状態となっていて、ハンドルに振動が伝わってくることもあります。

この際は、ブレーキキャリパーのオーバーホールやスライドピンの錆を落としてグリスアップをすることで対処できる場合もありますが、状態が酷くなってくるとスライドピンやピストンが抜けなかったり、錆等の劣化が酷く再使用することが難しいこともあります。そういった場合には各部品の交換が必要となってきます。

※これらブレーキ廻りの不具合は、ユーザー自身で点検・診断が難しい箇所となります。また、ブレーキ部品の整備は「分解整備」となり、安全運転の為にも重要な部位です。
以上のことを参考にもしブレーキ廻りが原因でのハンドルの振れが考えられる場合は、ディーラー等で確認してもらうようにしましょう。

ホイールアライメントが狂っている場合

ホイールアライメントとは簡単に説明しますとタイヤの向きや角度のことをいいます。このホイールアライメントが狂ってしまうとハンドルが取られる原因になりかねません。

車がきちんと真っ直ぐ走り、左右にハンドルを切った時に左右差が出ないよう、またタイヤが偏摩耗したりしないようにホイールアライメントにはきちんと規定値というものが決まっています。

車の使用過程において、足廻りのアームのブッシュ類(要は車の関節部)の劣化やヘタリなどでアライメントは変わってきます。また、車体の下廻りやタイヤをぶつけたり、大きな段差に乗り上げてしまうなど強い衝撃を車が受けると、一発でアライメントは狂ってしまいます。
アライメントが狂う原因は車のアーム類が曲がってしまうからで、これがハンドルが取られる原因にも繋がります。心当たりのある方は、まず下廻りの点検をしてもらいましょう。

タイヤの偏摩耗が原因の場合

ホイールアライメントの狂いだけでなく、扁平率の低い社外品のホイールに交換したことなどが原因でタイヤが偏摩耗する場合があります。その場合も左右でタイヤの接地面にバラつきが出る為、ハンドルが振れる原因となることがあります。
ハンドルを左右に切って、タイヤの内側と外側で磨耗の仕方が大きく違わないか確認してもらい、必要であればタイヤ屋さん等で四輪アライメント調整をしてもらいましょう。調整できる範囲での狂いだった場合は、これで改善されることもあります。

ハンドルの振れという症状は、車にとって大切な足廻りやタイヤに不具合があることを、ユーザーに知らせてくれる大切な信号と考えて良いでしょう。「これくらい、まぁいいか」…と放置せずに、ご自身の安全の為にも必ず早期に点検を行うようにしましょう!